「木の上の軍隊」観劇しました
5月19日に東京千秋楽を迎えましたが、
千秋楽を含めて3回観劇してきました。
最初は観に行く予定ではなかったんだけど(主に金銭面的なことで)
松下さんの再演なのに新しい舞台になっている、などの言葉を見て、
一度もこの作品は観たことないくせに気になって気になって仕方なくなってしまって、
結局行くことにしました(笑)
でも行ってよかった。
それに尽きる。
以下、感想です。
舞台の上にあるのは大きなガジュマルの木だけ。
でも非常に大きな存在感があります。
暗転・休憩などはなく、舞台にいるのは上官と新兵、木の精と上手に唯一の音楽であるヴィオラ奏者。
この4人のみです。
戦争の考え方や思いが全然違う上官と新兵。
最初のほうはあまりそれを感じさせないけれど、中盤から徐々に、そして後半一気に明らかになる。
その流れが見事でした。
島はもう戻らない。
靴を探したあぜ道は知らない敵兵を撃ち殺した道で、恋人と歩いた道は味方を捨てて逃げた道で、子供のころから見てたこの木は、二度と見たくない木になる。
たとえ島から敵がいなくなっても、もうあの島は戻ってこなくて、なにもなく笑って過ごしていたあの島ではなくなっている。
全く知らない島になっている。
一体ここはどこなんだ?
それが島の人にとっての戦争で、その戦争はずっと終わらず、島にあり続ける。
楽しい思い出も全部塗り替えられて、悲しい辛い思い出だけになる。
観ていて涙が出ました。
新兵のまっすぐな思いが、ひたすらに耳に痛く、決してひとつになれないことを実感させられた。
「上官は悲しくないんだ」
と新兵がいうシーンがあります。
島になにがあっても、結局のところ上官は悲しくない。
真理だと思いました。
どう頑張っても結局自分は本土側だし上官と同じ立場にしかなれなくて、新兵と同じ気持ちを持つことができない。
どんなに意見を持ったり反対していても、行動に起こしても、結局島に起きたことを心から悲しむことはできない。
そんな真実を突き付けられた気がしました。
「2年間毎日一緒にいても、お前のことがほとんど理解できなかったよ。
そばにいる隣人を理解できない。理解できないものと一緒にいる。一番怖いことだ。」
「それが何よりしんどい。だけど知りたいという気持ちはあった。」
この二人のやりとりが、本土と島の人の関係を表しているのかもしれない。
知りたいという気持ちはあった、という新兵の言葉の後に、泣きながら頷く上官の姿が印象的でした。
ラスト、ヘリの音が鳴り響いてとても衝撃をうけるんですが、
その音で思い出しました。
私もこの音聞いたなって。
近くに自衛隊基地があるところに勤務したことがあり、朝出勤のときに突然轟音がしたと思ったらヘリだったんですよね。
本当に周りの音が聞こえなくなるくらいの音だったのを覚えてます。
私がこの音を聞いたのは2~3度しかなかったんですけど、これを頻繁に聞かなければならない現実を考えさせられました。
この作品、2回観るのが自分の中でおすすめ。
1回目見て分かったことや伏線のようなことを2回目、理解した状態で観ると更に面白かったです。
言わないけど新兵はこここういう気持ちなんだ、上官はこの時既に分かってたんだ、とか答え合わせをしながら見れてよかった。
松下さんは私が観た公演では既に大胸筋損傷して、痛みと闘いながら演じられてた。
分かって観てたので、あまり左側を使っていないなとか気づいたけれど、言われなかったらきっと気づくことなんてなかったと思います。
それくらい普通に演技をされてたし、木を何度も登ったり降りたり動きまわっていらしたので。
東京千秋楽、3回目のカテコでガジュマルの木に向かって拍手をキャストのみなさんでしていたのが心に残っています。
そして1回目2回目のカテコでは真面目なお顔だった松下さんが、3回目ではふわっと笑っていたのが少し嬉しかったです。